日本で注目を集める、スウェーデンのオフィスデザイン
文:Adam Hesselbom
Sit & Stand デスク(昇降デスク)といえば、スウェーデンではポピュラーなオフィス家具の一つだ。この電動昇降デスクに惚れ込み、日本で普及させようと尽力している人物、岡部登紀子に話を聞いた。彼女によると、日本で最初にSit & Standデスクの価値を認めたのは、大学教授らだったという。
岡部登紀子は、東京を拠点に、北欧オフィス家具の輸入販売やオフィスのトータルデザイン・施工を展開する会社、スカンジナビアン モダンの代表取締役だ。2002年の創業以来、Edsbyn社(イエッツビン)のSit & Standデスク(デスクの高さを電動で自由に調整できる高機能デスク)をはじめ、多くの北欧オフィス家具をいち早く、日本に紹介してきた。
「私たちスカンジナビアン モダンは、Sit & Standデスクを初めて日本で販売した会社です。紹介した当初、すぐに反応してくださったのは、学会や研究などで北欧・ヨーロッパの大学や企業を訪れ、現地のオフィスの先進性を目の当たりにされた、大学教授の方々でした。現在まで、日本各地の大学の教授室に、Sit & Standデスク(昇降デスク)を提供してきました」と岡部は話す。
もちろん、人間工学に基づいて設計されたこのデスクは、大学教授のみならず、誰にとってもメリットがある。しかし、日本のオフィスワーカーは、企業から提供されるデスクの種類に関して、口出しできないのが一般的だ。
今日、スカンジナビアン モダンの主な事業は、新しいオフィスのデザイン設計・施工であり、顧客の多くは、グローバルに事業を展開するスウェーデン企業の日本支社(子会社)である。これらの企業は、日本のオフィスに本国スウェーデンの標準的なオフィスをそのまま導入することを望む傾向にあり、岡部のスキルが大いに活躍することになるのだ。
岡部は、最新のデザインのトレンドを常にキャッチするべく、定期的にスウェーデンのオフィスを訪れている。彼女が今年視察したオフィスの一つが、ストックホルムにある、新たに再デザインされたAMF社(不動産会社)のオフィスだ。同社では、デザインのさまざまな過程で、社員たちが積極的に関わりながら、自分たちのニーズに合ったオフィス作りに取り組んだという。
「ある意味、理想のオフィス作りだと思います。でも、これを日本の企業に完全に導入するのは、簡単ではありません。オフィスのデザインは、スペースの問題に大きく左右されますが、一般的に東京のオフィスは狭いのです」と岡部。
日本の企業は、限られたスペースにできるだけ多くのデスクと収納を備え付けようとする傾向にあると、岡部は指摘する。日本の企業の社員1人あたりの標準的なスペースは、7〜10平米。一方、スウェーデンでは、17〜20平米である。
岡部は話す。「日本にも、オフィス環境の現状に不満を持ち、意識を変えようとする人はいます。簡単ではないと思いますが、いつかは日本のオフィスも変わる。そう信じています。昔に比べたら、北欧オフィスへの注目度は、確実に高まっているのですから」
写真:「Sit & Standデスク(昇降デスク)は、体への負担を軽減する上に、社員間のコミュニケーションを活性化するツールです。結果、生産性が高まります」と説明する岡部登紀子。